イオン交換体及びキレート樹脂を用いた相互分離技術に関する研究

チーム紹介

 イオン交換は、砂糖の精製や純水の製造、分析分野などに用いられており、私達の生活に欠かせない技術となっています。イオン交換とは、イオン交換樹脂と呼ばれる固体中のイオンと溶液中の同符号のイオンが交換され、目的のイオンが固体中に捕捉される現象です。また、樹脂の中には金属イオンに配位する部分を複数持ち、この複数個の配位基で金属イオンを挟むように吸着するものもあります。このような樹脂はキレート樹脂と呼ばれており、より安定して金属イオンと結合するという特徴があります。当研究室では、これらの樹脂を合成し、めっき廃液に含まれる貴金属の回収やや低放射性濃縮廃液に含まれるレアメタルの分離について日々研究しております。

研究内容

貴金属やレアメタルの分離・回収

 貴金属やレアメタルは、我が国の産業に欠かせないものとなっております。その中でも金めっきは、その高い耐食性、導電性を有していることからプリント基板の電気接点などに広く用いられております。しかし、めっき後の金めっき浴中には金以外にニッケル、銅、コバルトなどが存在し、これらの金属元素はメッキ不良の要因と成り得ます。また、厳しくなる環境規制や資源問題の解決のため、めっき後のめっき浴の処理やリサイクル技術の開発は急務であります。現在、使用済みめっき浴の処理には陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を組み合わせたイオン交換塔が用いられていますが、このイオン交換塔は設備が大きく、設置の手間がかかる等の問題点を有しています。そこで本研究では、陽イオン交換基及び陰イオン交換基を樹脂内に持つ両性イオン交換樹脂に着目し、めっき浴中からの金とその他の金属元素との相互分離プロセスの開発を検討しております。


低放射性濃縮廃液中のNa(I)とその他核種の分離

 現在、日本原子力研究開発機構ではNa(I)を多量に含有する低放射性濃縮廃液が貯蔵されています。これらの廃液は、種々の工程においてそれぞれ適切な条件による処理が必要であり、各工程開始前には液性の分析が求められます。しかし、廃液の核種濃度をICP-AES等の発光分析に資する際、Na(I)の発光が他元素の定量を妨害し、正確な廃液組成の把握が困難となっています。そこで重金属に対し高い選択性を有すイミノ二酢酸キレート樹脂による低放射性濃縮廃液からのNa(I)の吸着分離方法に着目しました。イミノ二酢酸キレート樹脂は金属イオンに配位する部分を複数持つ樹脂であり、より安定して金属イオンと結合する性能が期待されます。当研究室では、低放射性濃縮廃液中のNa(I)とその他核種の分離能に優れたイミノ二酢酸キレート樹脂の開発を行っています。