溶媒抽出法を用いた有用資源の効率的な分離回収プロセスの開発

チーム紹介

 レアメタルは、多くの電子製品に利用されているため、技術立国の日本にとって必要不可欠なものとなっています。また、近年の世界経済の拡大に伴いレアメタルの需要は増加の一途を辿っていることから、価格の高騰や資源の枯渇などが問題視されていおり、自国内で安定した資源の供給源を構築することは急務となっています。そこで、新たな資源供給源として、ゴミとなった使用済み電子機器に含まれる金属を鉱山に見立てたことを指す「都市鉱山」が注目されています。この「都市鉱山」には自然の鉱山と比較し、10倍〜1000倍にレアメタルが濃縮された状態で存在していることから、自然鉱山に比べ、簡易なプロセスで高純度の金属を回収できることが見込まれています。本研究室では、イオン液体を用いた溶媒抽出法を用いて、この「都市鉱山」からレアメタルを高効率・高純度で回収する方法を模索しております。また、この抽出・分離技術を応用して原子力分野における核種分離技術を検討しております。

研究内容

溶媒抽出法とは?

 油と水のような互いに混ざり合わない2つの溶液の溶質の分配を用いて分離する方法です。特定の金属を抽出する油(溶媒抽出剤)を用いて、対象となる金属を抽出します。溶媒抽出の利点として、抽出容量が大きく、濃縮操作が可能、選択性が高く、最終産物の高付加価値化が図れる等が挙げられます。これらの利点から金属の回収方法として溶媒抽出法が多く採用されています


新規抽出剤を用いた白金族元素の分離回収に関する研究

 現在、廃工業製品からのPd(II)の分離・回収には、dihexylsulfide (DHS)を抽出剤に用いた溶媒抽出法が主流です。しかし、DHSは抽出速度が遅いことに加え、長時間の使用によりDHSが酸化し、Pd(II)に対する抽出能力が低下することが問題です。このため、DHSよりも優れた抽出剤の開発が求められています。そこで、当研究室ではジアミド配位子に着目しています。ジアミド配位子はC、H、O、Nで構成されているため、焼却処分により二次廃棄物の発生を抑えられます。さらに、ジアミド構造の中心に官能基を導入することで、金属イオンに三座配位する化合物となります。当研究室では、このような構造を抽出剤として用いて白金族元素の抽出特性能の検討を行うと共に、上記の問題解決を試みています。


イオン液体を用いた白金族元素の分離回収に関する研究

 溶媒抽出法ではトルエン等の有機溶媒を多量に使用します。しかし、有機溶媒の多くは揮発性・引火性を示すため、火災等の危険性があります。また、発がん性も有していることから健康被害の懸念があるほか、オゾン層の破壊等の環境負荷の問題点も提起されています。そこで、当研究室ではイオン液体に着目しています。イオン液体とは、常温において液体で存在している物質であり、難燃性や難揮発性を示す特徴を持っています。イオン液体は陽イオンと陰イオンの組み合わせのみで構成されており、この組み合わせによって特徴が変化します。このことから、イオン液体は目的に合うように特徴をデザインできるデザイナー溶媒とも呼ばれており、水、有機溶媒に次ぐ第3の液体とされています。当研究室では、このようなイオン液体を有機溶媒の代替溶媒として用いて、溶媒抽出法による白金族元素の分離・回収プロセスの体系化に向けて研究に着手しています。